パッシブデザインとは

太陽の光と熱、自然の風を建物のしつらえによって最大限利用しようとする設計技術、それがパッシブデザインです。

地域に密着した工務店であるからこそ出来る小さな配慮の積み重ねであると思われていたパッシブデザインですら、今や計算、規格化の時代になったようで、

パッシブデザインをやろうとすると気象庁HPでわが地域の平均気温を確認し、NEDOデータベースで平均日射量を拾い、入るであろう熱の量と逃げるであろう熱の量を計算して部屋面積当たりの窓面積を制限したりするのです…HEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)の基準というものが新たに設けられ、その動きは更に加速しています。

何でも規格化して計算させて性能評価書を取らせ、計算上の数値がいいからでいい家扱いして安心させるという、日本人の気質に合った商法だなと思います。

パッシブデザインの考え方はとても大切です。自然の風や光が多く入る家はとても過ごしやすく気持ちが良いですし、方角によって窓サッシやガラスの性能を変えたり、庇の長さを変えたりは理にかなっています、でも

一概に北だからと窓を小さくしたり、南だからと窓を大きくするのは少し違います。

建築基準法上の採光計算のときにも同じことが言えますが、敷地内の空地の大きさと方角だけでは実際に入ってくる光の量、熱量とは乖離してしまいます。

おすすめは、「日当たりシュミレーション」(ちょっとお時間いただきます)と、「朝、昼、夕方に建築地に行ってみる」の合わせ技です。

ぽつんと一軒家やひろ~い土地に建てられるケースなら必要ないですが、市街地では周辺の建物によって日当たり具合がかなり左右されますし、広島のような山や谷の多い街では、半日山影になる団地などもあります。

川が近ければ川から吹く風もありますし、周囲の建物に邪魔されて全然風が入らない場所もあります。

通風に必要だからとお隣の家のキッチンの排気のそばに窓をつけてしまったら、その窓は開けたくなくなるでしょうし、

西側だからと言って、せっかくのオーシャンビューを諦めるのもいけません。

現場で周辺をよく観察した上で、環境に合わせて建物プランをつくる、小さな配慮の積み重ね、やっぱりこれがあった上でのパッシブデザインではないかなと思っています。計算上の数値がいくら良くても、それが住む人にとっていい家とは限りません。数値や性能より、その場所や住む人に合わせた家づくりを大切にしたいなと思います。