有名な建築家と建てた家が住みにくくて、2回目の建築を考えていらっしゃる、という方とお話しする機会がありました。
その方はもうリタイアのご年齢になってから1棟めの家を建てられたそうです。
眺めの良い立地で、建築家の先生におまかせしたのだからと安心して、あまり深く考えずにいいね、いいねと提案を受け入れ続けていたら、
2階にLDKをつくり、キッチンを小下りにし、LDKに隣接する和室は小上がりになっていたそうです。
広々として写真映えするすてきなLDKにできあがりましたが、いざ、住んでみたらLDKだけで3段階の段差があるので毎日上がったり下りたり。奥様は一日に何度、手にお皿や荷物を持って段差を上り下りしていたか、数えきれないとおっしゃいます。
しかも2階LDKなので先日、膝が痛くてどうにも階段が上がれなくなり、1階の納戸をキッチンに改装して、今は日の当たらない寒い1階の北側をメインの居住スペースとして暮らされているのだそうです。
家は、建築家の作品ではなく、住む人のものです。
ばりばりとお仕事をされている先生はきっと、そこに毎日食料品を運び込んだり、掃除機をかけて、ゴミを捨てにいく主婦のことなんて想像もせずに家を設計されたのだと思います。せいぜい想像したとしたら、夜に気の合う仲間で集まって夜景でも眺めながらお酒を飲むようなことではないでしょうか。
家は、日常の場であって、そこで生活する人の為のものであるべきだなあとこの話を聞いてあらためて思いました。